4月8日(月)
一昨日から昨日にかけて、すごい風と雨だった。
そんな中で、サム・リーの『グラウンド・オブ・イッツ・オウン』を聴いた。
(以下は、『intoxicate誌vol.102』に書かせていただいた拙稿からの抜粋です)
そこで歌われているのは、
ブリテン諸島に散らばる移動民族の中で育まれてきた伝承歌の数々。
しかも、単純にそれら伝承歌をなぞり、歌っているのではない。
何処から見つけてきたのか、その使用楽器を含めて、風変りというか、
何処にもなかったような、誰もやったことのないやりかたで、現代に響かせる。
人によっては、ワールド・ミュージックの未来をそこにみるかもしれないし、
フォーク・ミュージックの行き着く先だと言い切る人もいるかもしれない。
エレトクロニカの新しい可能性をみる人がいてもおかしくないし、
音響系の鬼才と紹介する人がいても不思議ではない。
彼の歌声から、遠い時間の彼方に潜む人間の叫びを聴き取る人もいるだろう。
そのどれにもあてはまるし、どれにもあてはまらない。
終始、静かなトーンで統一されている。
深い森を歩き、木々の一つ一つに触れて、その生命にそっと耳を澄ます。
そういう細やかさと同時に、空高く浮かぶ雲をひょいとつかみとる大胆さも備え持つ。
例えば、そういう音楽を楽しませてくれるのだ。